松島頼子, 近藤正臣

 滋賀出身の母は死について話すのが好きだった。「私が死んだらな、お墓はいらん。お骨は砕いて小さいかけら一つ残しといてや。あとは比叡おろしの吹く日に琵琶湖の見えるところからお酒と一緒にビヤーッとまいて…」  母の死後、近藤さんは言われた通りにした。ただ一つ残したお骨のかけらは八幡の家の山桜の下に眠る。「ぼくも母と同じ。お葬式もお墓もいらん。あなたも死ぬ、ぼくも死ぬ。誰でも必ず死ぬんやから、それを受け止めて、今あるもんで楽しむ。なんや、お坊さんみたいやな」。こう言って、近藤さんはほほ笑んだ。